当社プロダクトに採用している技術、その性能評価基準などを解説します。
1. 「Pure-Balanced」
当社は、バランス増幅およびバランス入出力を採用しています。下図の回路図は、その基本モデルです。
バランス増幅回路は、差動アンプとプッシュプル・バッファーの組み合わせで構成されており、当社プリアンプの基本回路となっています。
バランス入出力は現行のプロ機器や民生機器で使われているロー・インピーダンス出力、ハイ・インピーダンス入力の電圧伝送です。往年の真空管時代の600Ωインピーダンス整合型ではありません。
アンバランス入力は初段差動アンプでバランスへ変換します。出力はバランスのみです。

2.「Cross Follower」
当社は、2つのフローティング電源を用いて、負荷を相互に反対位相で駆動する、カソード出力のCSPP(Cross Shunt Push-Pull)回路を採用しています。
出力管のインピーダンスは低く、出力トランスによる磁気合成は必要なく、直流電流は重畳しないので、出力トランスは1次側巻線全体を使ったインピーダンス変換器として動作します。
結果として、周波数特性が良く、スピーカー制動能力が高い出力回路が出来上がります。(下図左) OTL方式にも応用可能です。(下図右)
当社の独自性は、ドライブ段を含めた回路方式にあります。それはAB級の出力段を、差動ドライブ回路により性能的に差動A級と同等にする方式です。このためにブートストラップによるドライブ段への正帰還を使用しています。結果として、高調波歪が少なく、残留ノイズも少ない出力回路が出来上がります。
(詳細は各プロダクトの資料をご参照ください。)

3.「Cross Parallel」
当社のほとんどのパワーアンプは、カソード出力のCSPP回路を採用しています。それは、出力トランスでの磁気合成を回避し、出力トランスを単純な出力信号のインピーダンス変換器として使用することを目的としています。
そして、この「Cross Parallel」方式は、プレート出力において、同じ目的をシンプルな信号経路で実現する方式として考案したものです。
2個の出力トランスの2次側で、出力電流を並列に合成する方式で、負荷のインピーダンス低下にも対応できる特長があります。当方式は、300Bバランス・アンプにて採用しています

4.「Quad Follower」
カソードフォロワー型のSRPP(Shunt Regulated Push-Pull)を基本型として、バランス化したうえで、アンバランス入力も可能とした回路です。4本の真空管を配置した形から、当社は「Quad Follower」と呼んでいます。
出力はフローティング出力です。正負2電源方式により出力はアースに近い電位となっていますので、ヘッドフォン等を直接バランス接続できます。
この回路は、出力インピーダンスが低く、周波数特性も極めて良好です。

Quad Follower
5.「省帰還」技術
帰還技術は、出力の一部を入力に戻して打消し補正を行うもので、現代アンプには欠かせない技術です。当社が推奨する「省帰還」は、「省エネルギー」の「省」と同じく、目的に合わせて抑制的かつ効果的に、この技術を使うことを意図しています。
当社が採用するバランス方式は、雑音の除去や歪の低減などの特長があり、双3極管の場合、ヒーターに由来する熱雑音にも効果があります。特性の優れた管種を採用することで、帰還技術に頼らずに高い性能を実現することができます。この利点を活かして、プリアンプやフォノイコライザーなど小信号のプロダクトは無帰還アンプとなっています。
一方パワーアンプでは、スピーカーシステムを低インピーダンス駆動する目的で、必要に応じて帰還技術を使用しています。当社のパワーアンプでは、出力トランスを低インピーダンス駆動してその性能を引き出すことに注力しており、出力トランス自体は帰還ループに入れないように設計しています。
(詳細は各プロダクトの資料をご参照ください。)
6.「音楽の自然な再生」
当社の音質についての考え方を、ホームオーディオ用アンプを提供するメーカーの立場から、「周波数特性」と「位相特性」に絞って簡潔にご説明します。
ホームオーディオの聴取位置での周波数特性は、スピーカーシステムと室内音響よって大きく変化します。音楽ソースに込められた表現を正確に再現するためには、全体でフラットな特性になるように調整されるべきです。オーディオを趣味とする人にとって、この調整作業は根気の要る楽しみでもあります。
しかし、その結果がリスナーの感性に響かないのであれば無意味で、そこには個性があっても良いと当社は考えています。パワーアンプは入力信号に従って正確にスピーカーシステムを駆動する能力を提供しますが、リスナーの感性には揺らぎがあり、それに合わせて、プリアンプには、周波数特性のエネルギーバランスを調整する能力が必要だと考えています。
一方、位相特性は絶対位相、相対位相ともに正確であることが重要です。音は空気の疎密波であり、音楽の収録現場の位相とスピーカーから再生される位相は同じである必要があります。それは、空気が疎である時と蜜である時の、聴覚の働きは異なると考えるからです。
また、空気中の低音と高音の伝達速度は同じです。電子回路がこれを変えてはなりません。
音楽ソースが制作される過程は信頼するとして、再生側のオーディオ機器においても、発生不可避な位相偏移を、再生する全帯域で極力小さくすることが重要です。
モノーラルでも遠近を感じることができます。ステレオ再生においては、上下左右前後の立体感と定位感、そして、それらを総合した臨場感をもたらしてくれる重要な特性です。当社が「省帰還」に拘るのは、この特性の向上と密接に関連するからです。
7. パワーアンプ出力と音圧
パワーアンプの定格出力の評価は、音圧レベル(SPL:Sound Pressure Level)に換算すると簡便です。スピーカーの能率表示が、2.83V (1m/1W/8Ω)基準であることを利用します。
音楽聴取に最適な音圧レベルは、一般的に 70dB~80dBと言われています。瞬間的なピークに対する余裕を 10dB(3倍)と見込むと、90dBあれば音圧は必要十分だと考えます。
平均的なスピーカーの能率は87dB前後です。スピーカーシステム2本でのステレオ再生では、3dB加増されて、90dBとなります。スピーカーから1mの聴取位置では、アンプの出力は1W+1Wで足りることになります。
スピーカーから聴取位置までの距離が大きくなると、音圧は反比例して減衰するので、その分をアンプの出力で補うことになります。一般的には3m~5mと考えられるので、アンプの出力は8Ωの負荷に対して、9W+9W~25W+25Wが必要となります。

しかし、現代のネットワーク型マルチウエイ・スピーカーは、公称インピーダンスの1/2程度に、インピーダンスが低下する帯域を持っています。これを定電圧駆動するには、上表の2倍のアンプ出力(=2倍の電流供給能力)が求められます。当社パワーアンプは、このインピーダンス低下を見込んだ設計を行っており、対応可能な入出力特性を実現しています。
8. ダイナミックレンジ
人間の聴覚は、20Hz〜20kHz の周波数と、120dBのダイナミックレンジを知覚する能力があるとされています。そのうち、周波数の知覚能力とダイナミックレンジの下方向の知覚能力は、個人差はあるものの、加齢とともにゆっくりと、知覚レベルが減退していきます。一方、過大な音圧(ダイナミックレンジの上方向)は、短時間で、聴覚全体に回復が難しいダメージを与えます。過大な音圧は、厳に慎むべきです。
下表は、各媒体のダイナミックレンジの最大値を示したものです。

アナログ媒体については、収録音源のダイナミックレンジは、上表と同等と解釈しています。
デジタル媒体については、量子化ノイズ対応分(約16dB)を差し引いて、実際の収録音源のダイナミックレンジは、80dB前後と解釈しています。
9. フォノ入力のS/N比
フォノ入力は、フォノイコライザー、ライン・プリアンプ、パワーアンプの3つのアンプユニット、もしくはコンポーネントを通して、スピーカーシステムが駆動されます。
当社は、各チャネルにおいて、2.83V (1W/8Ω) 基準で、収録音源のダイナミックレンジを10dB程度上回るS/N比が確保されることを、ノイズの品質基準としています。
ポイントは、ターンテーブルとの接続にあります。下表では、50nVを見込んでいます。当社が推奨するターンテーブルとのバランス伝送は、この部分のノイズ低減に極めて有効です。

10. ライン入力のS/N比
ライン入力は、ライン・プリアンプ、パワーアンプの2つのアンプユニット、もしくはコンポーネントを通して、スピーカーシステムが駆動されます。
当社は、各チャネルにおいて、2.83V (1W/8Ω)基準で、入力機器(CDプレイヤー、DAC、レコーダー機器など)のS/N比と比較して、S/N比の劣化が-10dB前後であることことを、ノイズの品質基準としています。

通常、CDプレイヤー等は2Vrms 出力として評価しますが、収録音源のダイナミックレンジに合わせて、300mVrms(-16.5dB) 出力で評価しています。
11. 電源回路
ご紹介した当社の技術を支えているものは、電源の回路技術と実装技術です。
- パワーアンプはデュアル・モノーラル構成を採用して、さらに以下の点を考慮しています。
- レギュレーションの良いRコア電源トランスを、ホット側とコールド側で個別に搭載しています。
- 出力管の高圧電源は倍電圧整流を採用して、ACラインの電流ピークを低減しています。
- フィルターは半導体やチョークを使用せず、十分な段数のCRフィルターを採用しています。
- 出力管への給電は、大型フィルム・コンデンサーを採用して、各管個別に給電しています。
- プリアンプ、フォノイコライザーでは、以下の点を考慮しています。
- レギュレーションの良いRコア電源トランスを、アンプ用とヒーター用で個別に搭載しています。
- フィルターは半導体やチョークを使用せず、十分な段数のCRフィルターを採用しています。
- 各アンプ段へ個別平滑回路より給電して、グランド・ラインと給電ラインを分離しています。
- 各アンプ段の正確なバランス調整により、給電ラインと音声信号ラインを分離しています。
なお、上記の実現は、近年の受動部品の高性能化と小型化に支えられています。
